納骨と宗教宗派ごとの葬儀について
納骨とは故人の遺骨をお墓や納骨堂に納めることで、一般的に納骨は喪に服していた遺族が日常生活に戻るタイミングでもある四十九日に行うことが多いようです。しかし、納骨時期に明確な決まりはありません。また、葬儀と一括りに言っても、宗教や宗派によって方法や世界観は違ってきます。各宗教や宗派によって大切にしている世界観がそれぞれ違うのは勿論の事、生死の捉え方にそれぞれ違いがあるのが大きな理由となっています。
今回の記事では、納骨と宗教宗派ごとの葬儀について詳しくご紹介致します。
納骨に適した時期について
納骨とは故人の遺骨をお墓や納骨堂に納めることで、一般的には納骨式は四十九日・百箇日・一周忌・三回忌などの大きな法要を目安に行われることが多いです。お墓などに納めるには「埋葬許可証」と墓地や霊園に納骨する場合は管理者に発行して貰う「墓地使用許可証」・改葬で樹木葬や納骨堂に納める場合には管理者に発行して貰う「受入証明書」が必要となりますので頭に入れておきましょう。※この許可証は自治体によって名称が変わることがあります。※
納骨については、宗教的にも法律的にもいつまでにしなくてはいけないといったような決まりはありません。葬儀の当日に埋葬という地域やご家庭もあれば、別れが辛く埋葬をまだしたくない・墓地が決まっていないといったような理由でしばらくの間は埋葬に踏み切れない方もいらっしゃいます。しかし故人様に安心して眠りについて頂くには納骨は欠かせない行事と言えますから、ご家族のタイミングで納骨を行いましょう。
ここからは納骨に適したタイミングを意味も含めて詳しくお伝え致します。
- 四十九日
- ◇時期
命日から数えて49日目 - ◇意味
四十九日は故人が現世から離れ、成仏し極楽浄土へ旅立つことを願う法要です。すでに墓地の手配や墓石の準備ができている場合・納骨堂を利用する方は、それまで喪に服していた遺族が日常生活に戻るタイミングでもある四十九日に納骨する場合が多いようです。 - ◇注意点
命日から49日というと期間が実質2ヵ月もありませんから、新たにお墓を建てる場合であると準備が間に合わず四十九日に納骨ができない場合もあります。その際は四十九日後の法要と共に納骨を行いましょう。
- 百箇日
- ◇時期
四十九日の忌明け後初めて行われる法要で、命日から数えて100日目 - ◇意味
百箇日は「卒哭忌」とも言い「悲しんで泣くことから卒業する」という意味を持ちます。悲しみからの卒業というタイミングで故人様を自宅からお墓へ移し本当のお別れをするという方も少なくありません。 - ◇注意点
100日経ったからと言っても大切な家族を失った悲しみは癒えませんね。しかし、葬儀後にお墓を建てる場合は四十九日には納骨が間に合わず百箇日に納骨を行う場合も多く、偲ぶ会やお別れ会なども百箇日に合わせて行われることが多い傾向にあります。
- 一周忌
- ◇時期
亡くなってから満1年の命日(もしくはその付近)の法要 - ◇意味
四十九日にはお墓の準備が間に合わないので百箇日で納骨を執り行う場合もあると先にお伝えしましたが、近年では百箇日には馴染みがない方も少なくはありません。百箇日をしない、百箇日にお墓が間に合わない場合には喪が明ける区切りである一周忌に納骨を行う方も多いようです。 - ◇注意点
先祖代々のお墓がない方などお墓の場所や費用・供養の方法などについて時間をかけて考えることができますので、一周忌法要を目安に納骨されると納得のいく供養を行うことが出来ます。
納骨式と納骨事情について
納骨式を円滑に進めるためには事前に当日の流れを把握しておくと良いでしょう。ここからは納骨式の流れについてお伝え致します。
まずは納骨式前に準備するべきことですが一般的に納骨式は先で挙げた大きな法要を目安に行われることが多いです。曜日や参列者・僧侶の都合などで法要当日に行うことができない場合は、先送りにはせずに前倒しします。希望する日程で行うためには早めに納骨式を行う日を決めておくことが大切です。続いて納骨式までの準備と流れですが、まず考えなくてはならないことは「どこに納骨をするのか」という点です。先祖代々のお墓がある場合にはそのお墓に納骨をするという方が多いですが、お墓がない場合には、新たにお墓を建てたり納骨堂を利用したりと様々な選択肢があります。どこに納骨をするのかによって、納骨式までの流れや必要な準備が変わってきますが、以下にお墓に納骨する場合の準備と流れを簡単にまとめました。
- 納骨準備の流れ
- 1.納骨式の日取りを決める
- 2.石材店にお墓の字彫りを依頼する
- 3.遺骨を納める場所の開閉のお願いをする
- 4.埋葬許可証を用意して納骨に備える
- 5.納骨する日を親族に連絡する
- 6.お供え物や返礼品などの準備をする
納骨式当日の流れについては、当日は早めに会場へ向かい参列者を出迎えます。僧侶へのお布施・お供え物や供花・位牌・遺影・返礼品も忘れずに持参しましょう。納骨式の流れは以下の通りです。
- 納骨式当日の流れ
- 1.施主より挨拶(遺骨は故人と血縁の深い方が持つ)
- 2.遺骨を納める場所のふたを開け納骨
- 3.僧侶による読経
- 4.遺族から順に焼香
納骨式にかかる時間については、宗派や出席者の人数にもよりますが概ね30分から1時間ほどです。納骨式が終わったら会食の席へ移動します。施主からの挨拶で会食の始まりと終わりを告げます。会食終了後、参列者へ準備しておいた返礼品を渡しましょう。
納骨式は法要と同時に執り行うことが多いため、服装マナーは法要のものに準じます。僧侶の立ち会いのもとで進められる納骨式では、準喪服と呼ばれる葬儀と同様の服装での参列が良いでしょう。家族のみで納骨を行う場合の服装についても、一周忌までは喪服が望ましいといわれています。家族のみの場合でも、僧侶に失礼のないよう事前に服装の準備を怠らないようにしましょう。
多様化する納骨事情についてですが、後継者の問題や金銭面の問題などの様々な理由で近年では従来のようなお墓は避けたいという意見を耳にする機会が多いです。実際に従来のようなお墓は避けたい場合には手元にある遺骨はどうしたらよいのでしょうか。お墓がない場合の納骨は、新しいお墓を建てる以外にもさまざまな供養の方法があります。
- 手元供養
- 墓地以外の場所に遺骨を埋葬することは法律違反ですが、そうでない限りはいつまでも骨壺のまま遺骨を持ち続けても問題はありません。実際に自宅や仏壇に遺骨を保管しているという方もいます。手元供養は遺骨の全てを自宅で保管する、もしくは遺骨の一部を手元で保管するという二つの方法が挙げられるでしょう。手元供養は費用を抑えられることに加え故人様を身近に感じられるなどが利点として挙げられますが、ご遺骨のその後の管理などについてご家族の理解を得る必要があります。
- 永代供養墓
- 墓地が存在する限り、管理者が供養を続けてくれるお墓が永代供養墓です。お墓が欲しいけれど当面の費用に不安がある、後継者がいないという方も永代供養墓なら比較的安価で管理者がいるので安心ですが、永代供養墓の中には合祀といって遺骨を骨壺から取り出し他のご遺骨と一緒に埋葬をする形もあり、遺骨を取り戻すことができなくなりますので注意が必要です。
- 共同墓
- お墓には家族・親族単位で入るものという考えが根強くありますが、血縁関係のない他人同士で同じお墓に入るのが共同墓です。共同墓はNPO法人や企業などが一緒のお墓に入りたい仲間を集め、お墓を建て管理します。独り身の方など亡くなったあとの不安を解消できますが、共同墓を管理している団体や企業がなくなればお墓もなくなってしまうという注意点がありますので、共同墓を検討する際には信頼できる団体や企業を見つけることが重要です。
- 納骨堂
- 夫婦や個人などで遺骨を預ける場所を納骨堂と言い、その名の通り納骨堂に遺骨を納めるのは法律上は収蔵ということになりますからお墓に入れるような埋蔵とはまた異なります。納骨堂は元来お墓を建てるまで一時的に遺骨を預かるための施設でしたが、近年では都市部の代替墓としての利用も増加しています。比較的安価で掃除や草取りといったメンテナンスが不要ですが、個別管理の期限後は合祀される場合が多いので注意が必要です。
- 散骨
- 遺骨を粉骨し海や山など自然にまいて供養することを散骨といいます。地権者に無断で敷地に散骨することはできませんし、遺骨やお墓がない為お参りに行く場所に困るという点で注意が必要です。散骨について、法律による規制はありませんが、地域や場所によっては条例によって散骨を禁止している場合もあります。
- 樹木葬
- 墓石の代わりに樹木を墓標とし遺骨を埋葬する方法が樹木葬です。樹木葬には遺骨を埋葬してそこに樹木の苗を植える方法と、一本のシンボル樹の周辺に遺骨を埋葬するという方法があり、個別の納骨期限が決まっている場合には期限後に合祀されるということもありますので注意が必要です。
仏教の葬儀について
日本で執り行われる葬儀の中で最も多いとされているのは、仏教の葬儀です。仏教の葬儀と言っても五十以上ある宗派によってそれぞれ若干の違いはありますが、基本的には故人が所属している宗派の僧侶によって、通夜・告別式・火葬・埋葬という流れで葬儀を執り行うのが一般的です。故人の冥福を祈り次の世へと送り出す儀式を通して、故人は極楽浄土へと送られるという世界観になります。
仏教におけるお通夜は、簡潔に纏めると家族や縁者などの近しい方々が集い故人との別れを惜しみながら邪霊から故人を守る儀式です。まだ医療が発達していなかった昔は故人が本当に亡くなったのか確認するのと同時に遺体を動物などから守るために夜通しで見守りが行われていた為に通夜という名前が付きましたが、近年では日をまたがずに半日から数時間程度の通夜も増えています。また、近親者だけ呼ぶのではなく告別式等に参列できない一般の弔問客も呼ぶような傾向も増えてきています。
通夜の後に行われるのが、葬儀式と告別式で、まとめて葬儀あるいはお葬式と言われる事が多くなってきました。葬儀式と告別式は故人が亡くなった次の日に同時に行われる場合が多く、近親者だけでなく知人も交えて行われる追悼の儀式となります。葬儀式の流れや方法は各宗派によってそれぞれ異なりますが、いずれも僧侶の読経や偲びの歌などを通し故人の冥福を祈り次の世へと送り出す儀式が行われます。葬儀式は親族の意向によっては親族のみで行う場合もあり、反対に告別式は知人や友人も交え焼香や献花などを行い故人へ最期の別れを告げる場となります。
神道の葬儀について
神道における葬儀(神葬祭)は日本の各地域で生まれた神道による伝統的な葬儀です。神葬祭は神社の神職により執り行われ、枕直しの儀・納棺の儀・通夜祭・遷霊祭・葬場祭・火葬祭・埋葬祭・帰家祭という流れで進みます。神道の歴史は古く縄文時代や弥生時代等に自然発生したと言われていて、神道においては「死=穢れ」とされている為に神葬祭を行う事で穢れを浄めるという考えになります。穢れを浄め故人の御霊が家の守護神となるよう祈る儀式によって、故人の御霊は家に留まり家の守護神となるという世界観です。
故人の死後に行われる枕直しの儀は親族等の近しい者だけで行われます。具体的には、故人に白い小袖を着せ北枕に寝かせて食料やお酒など故人の嗜好品等を供える枕直しの儀から始まります。命が蘇るようにという願いを込め、末期の水を故人の口元に塗り口元を潤す儀式も行います。その後に祖霊に故人の死を知らせ棺に納め通夜祭を行います。通夜祭とは仏式で言うところの通夜に当たる物になるのですが、焼香や線香は使われず、榊の小枝に紙垂をつけた玉串を捧げます。同時に、故人の御霊を位牌である霊璽に遷し留める遷霊祭が行われます。その後に行われる葬場祭は仏式でいう葬儀式や告別式と同じ意味を持ちます。霊璽となった故人へ最期の別れを行い再び玉串奉奠が行われます。その後に火葬祭・埋葬祭と続くのですが、神葬祭での埋葬は通常だと五十日後に行われる場合が多いです。
キリスト教の葬儀について
キリスト教には大きく分けてカトリックとプロテスタントの二種類が存在します。キリスト教では、死後に執り行う葬儀だけでなく死直前における儀式も大切にしているのが特徴となり、すべての罪を解放し永遠の安息を得た事を祝うという世界観です。
死後に執り行う葬儀だけでなく死直前における儀式も大切にしていると述べましたが、死の直前にカトリックでは司祭を呼んで神に祈り、今までの罪全てから解放されるよう祈りを捧げます。この際に聖油で顔と両手に十字架をかく場合もあります。一方プロテスタントでは、死の前後には牧師を呼び永遠の安息を祈り、聖油は使わずにキリストの血肉とされているパンと赤ワインを口へ含ませる聖体拝領が行われます。カトリックとプロテスタントの場合にも、キリスト教における死は神の元に召され永遠の安息が得られる喜ばしきものとされているので「死」ではなく「召天」と言われています。
死の直後にはカトリックでは聖体拝領が行われ、通夜祭・出棺式・葬儀式・告別式と続き、火葬・埋葬の順に執り行われます。元々はキリスト教に通夜という儀式はありませんが、日本の風習に沿い通夜と同様の儀式が取り入れられる事もあるようです。また、葬儀式では賛美歌や聖書の朗読が行われ、司祭による説教や参列者全員での祈願もあります。キリスト教の埋葬は本来であれば土葬なのですが、日本では土葬は認められていない理由から火葬を行います。プロテスタントもカトリックとほぼ同様の流れとなり、通夜祭と同義の前夜祭、出棺式・告別式・火葬が執り行われます。